とじる
寄る辺
言葉、それが芸術か否かはさておき、残すタイミングというものが存在するように思えます。その齢、季節、出会い、別れ、心境変化、それを成熟と呼ぶべきか、はたまた退行なのかはわかりませんが人生のある一定の期間にしか書けないものは間違いなく在ります。その中でとりわけ「遺書」というものは果たして今際の際に書くものなのか、それが然るべきタイミングなのかと悶々としておりました。私の人生はとっくに私の手を離れていて、創作に魅せられたといえば聞こえが良いですが、その大きさ故に輪郭を捉えることすら難しい概念に先導してもらわないと足が先へ進まないのです。遺書を残すには、既に本人の意識が希薄すぎます。ただ、その先導によって刻まれる足跡は紛れもなく人間の足の形をしています。踏んだ本人の意思が靴底の形に反映されないように、私がそれをどういう気持ちで踏もうが人の足跡です。誇れるものが多くない自身の人生に、唯一、他人に何かを与える可能性をもっている楽曲、ひいては詞たち。それをこの「遺書」という場所へ羅列することで、決して少なくはない人数に自分の生き様をいち人間として覚えておいてもらえる気がするのです。
文章◉澤田 空海理
装画◉田雜芳一
Digital Single
日陰(feat.ちょまいよ)
2020.9.4

作詞作曲・編曲:澤田 空海理

Starring : haruta
Guest Vocal : ちょまいよ
Mastered by utako
Video Director : whoo

日陰(feat.ちょまいよ)

作詞 : whoo

君の日陰に、僕を入れてよ
けだるい暑さに、
そのまま倒れないように

夏の余熱を、浜辺で冷ませば
砂文字で君の下の名前を
描いた

さざなみが君のこと、
一文字攫って
宵闇に消えた

今、貴方の景色があふれてしまいそうだ
それでも怖くはないよ
喧騒に浮かぶ夏の色の花
僕の亡くした言葉

君の日陰に、僕を入れてよ
さざめいた日々に
小さな隙間がほしかった

入道雲で閉じ込めてしまえば
君の横顔も、枯れることもなく
咲いていた

カランと揺れる氷に
口もつけぬまま
闇に溶けた影

今、貴方の奇跡が
こぼれてしまいそうだ
僕らは、歩いていた
潮騒に沈む夕暮れの坂を
手を引いて進んだんだ

描きかけの世界地図
あらゆる夢の中
飛び乗った僕らは
四畳半が世界の隙間
この旅の行方

チラシの裏側に
安っぽい飛行機
描いて飛ばした

今、貴方の景色が
あふれてしまいそうだ
それでも怖くはないよ
喧騒に浮かぶ夏の色の花

今、貴方の奇跡が
こぼれてしまいそうだ
僕らは、歩いていた
潮騒に沈む夕暮れの坂を
手を引いて進んだんだ

手を引いて進んだんだ