とじる
寄る辺
言葉、それが芸術か否かはさておき、残すタイミングというものが存在するように思えます。その齢、季節、出会い、別れ、心境変化、それを成熟と呼ぶべきか、はたまた退行なのかはわかりませんが人生のある一定の期間にしか書けないものは間違いなく在ります。その中でとりわけ「遺書」というものは果たして今際の際に書くものなのか、それが然るべきタイミングなのかと悶々としておりました。私の人生はとっくに私の手を離れていて、創作に魅せられたといえば聞こえが良いですが、その大きさ故に輪郭を捉えることすら難しい概念に先導してもらわないと足が先へ進まないのです。遺書を残すには、既に本人の意識が希薄すぎます。ただ、その先導によって刻まれる足跡は紛れもなく人間の足の形をしています。踏んだ本人の意思が靴底の形に反映されないように、私がそれをどういう気持ちで踏もうが人の足跡です。誇れるものが多くない自身の人生に、唯一、他人に何かを与える可能性をもっている楽曲、ひいては詞たち。それをこの「遺書」という場所へ羅列することで、決して少なくはない人数に自分の生き様をいち人間として覚えておいてもらえる気がするのです。
文章◉澤田 空海理
装画◉田雜芳一
Digital Single
日陰(feat.ちょまいよ)
2020.9.4

作詞作曲・編曲:澤田 空海理

Starring : haruta
Guest Vocal : ちょまいよ
Mastered by utako
Video Director : whoo

日陰(feat.ちょまいよ)

君のこと思い出そうとしたんだ。
怒った顔も心が潤けるのは
もう整理されているから。
肩に来る小さな頭がどうか、
目を合わせて話す生硬さがどうか
報われますように。

なしくずしに続いた関係を
崩してしまいたくなるような余計を。
正解だったかどうかなんてわからないけど、
疑うことじゃない。それくらい、わかるよ。

春色のフレアスカートを穿いていた。
桜が引っかかって乙なものだった。
僕らは足を引っ張り合ってきたけど??
手を引いていくことも出来たよな。

冗?な冗談さえ詰まるほど
余裕が無くなったのはいつからだろうね。
あれ、いつからだっけ。
緩やかに死んでいく情があった。
なのに延命を望まなかった。
なんか、わかっていたんだろうね。

なぁ、「私には似合わない」なんて言うなよ。
そういう色ももっと着ればいいのに。似合うよ。
その一言さえ言わなかったくせにさ。
何を返せる気でいたんだろう。

君の、たまに雑な言葉づかい。釣られるんだよ。
褒められたもんじゃないよな。
残したい癖では決してないけど
消したい癖では決してないんだ。

振り返る拍子に舞っていた匂いは
思えば君のものだ。忘れてないや。
桜が引っかかってはたく仕草の
神経質そうなその指を。

分かり合った気でいるのは
これ以上知るのを放棄したいから。
理解とは都合の良い勘でしかないから。
僕が君の手を引くから、君は足を引っ張っていいよ。
そしたらさ。そしたらさ。

驚いた。もう一年が経つんだ。
春が来るんだ。君のいない春が在るんだ。
気付くのに冬までかかったよ。