とじる
寄る辺
言葉、それが芸術か否かはさておき、残すタイミングというものが存在するように思えます。その齢、季節、出会い、別れ、心境変化、それを成熟と呼ぶべきか、はたまた退行なのかはわかりませんが人生のある一定の期間にしか書けないものは間違いなく在ります。その中でとりわけ「遺書」というものは果たして今際の際に書くものなのか、それが然るべきタイミングなのかと悶々としておりました。私の人生はとっくに私の手を離れていて、創作に魅せられたといえば聞こえが良いですが、その大きさ故に輪郭を捉えることすら難しい概念に先導してもらわないと足が先へ進まないのです。遺書を残すには、既に本人の意識が希薄すぎます。ただ、その先導によって刻まれる足跡は紛れもなく人間の足の形をしています。踏んだ本人の意思が靴底の形に反映されないように、私がそれをどういう気持ちで踏もうが人の足跡です。誇れるものが多くない自身の人生に、唯一、他人に何かを与える可能性をもっている楽曲、ひいては詞たち。それをこの「遺書」という場所へ羅列することで、決して少なくはない人数に自分の生き様をいち人間として覚えておいてもらえる気がするのです。
文章◉澤田 空海理
装画◉田雜芳一
Album
振り返って
2022.2.23

¥1980(税込)
SNCL-00064

1.与太話
2.魚と猫
3.曖昧に甘い
4.カメラシャイ
5.望春
6.またねがあれば
7.愛猫
8.振り返って

Photographer : 枝優花
Model : 溝畑幸希
Stylist : 小宮山芽以
Hair and Makeup : honoka.
Designer : 大城慎也

Words/Music/Arrangement : 澤田空海理
Guest Vocal : 千鎖(Track3)
Arrangement/Chorus : whoo(Track5)
Drums : 吉田光佑(Track8)
All Other Instruments : 澤田空海理
Drums Recorded at Cafe au Label Recording Studio
Mixing Engineer : 原朋信(Cafe au Label/Track3,5,6,7,8)
: 古市暁大(studio MSR/Track2,4)
Mastering Engineer : utako

春は嫌いだ。
青臭い花の匂いも、まるで人の機微そのものかのような温度も、
共有できない花粉症の話題を持ってくるところも。
あなたはいつも冬に居なくなる。私は、それを春の中で名残る。